AGA治療の正解は?日本皮膚科学会の脱毛症診療ガイドライン解説

AGA

男性の4人に1人は発症してしまうAGA。「自分だけは大丈夫。俺がハゲる訳ない(笑)」なんて思っていても男性型脱毛症は容赦無く襲いかかってきます。私も同級生達に会うたびAGA患者が目立つようになってきた事で、いよいよ正しい予防・治療法を知ってもらえる機会が必要だと感じるようになりました。世の中にはたくさんの薬やサプリ、民間療法のようなものが溢れていますが今回は信頼度の高さから日本皮膚科学会の定めるガイドラインをベースにAGA治療についてご紹介していきます。

有効とされる治療法を皮膚科医の立場から推奨度A~Dに分類

まず結論からお伝えすると、日本皮膚科学会は2017年の見解として次の表のように各治療の推奨度を決定しました。

男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版

男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版

推奨度はA〜Dに別れており、次のような意味になっています。

  • A:行なうよう強く勧める
  • B:行うよう勧める
  • C1:行っても良い
  • C2:行わない方がよい
  • D:行うべきではない

日本皮膚科学会が明確に「勧める」「行った方がよい」と明言してくれている治療法となれば「本当に効果があるの?」という不安も随分解消されますね。なお、ここに掲載されていない治療法や成分はダメだという意味ではありません。実際にD評価を受けている治療法の中にも「日本の歴史的背景」という曖昧な理由で評価が下げられている可能性もあります。

以下、評価についての補足として併記されている文章です。

ただし,本文中の推奨度が必ずしも上記の判断基準 に一致しないものがある.その理由は,この分野では 国際的にもエビデンスが不足している状況,日本の歴史的背景や特殊事情,さらに診療ガイドラインの実用性も考慮して,委員会のコンセンサスに基づき推奨度 を決定した項目があるからである.

男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版より引用

つまりこのガイドラインは完全なものではなく、現時点で日本皮膚科学会の立場(大人の事情なども含む?)から発表しているもの。という意図も汲み取って活用するといいでしょう。

やはりフィナステリド(プロペシア)とミノキシジルは最高評価のAを獲得

この2つの成分は日本でもかなり有名どころかと思います。10年ほど前に突然TVCMで「AGA治療は病院で!」といったフレーズが使われだし、病院に行きAGAだと診断されると処方される薬がこのMSD製薬のプロペシアでした。逆に言えば「AGA患者の90%以上に改善・効果が認められた飲む治療薬」としてプロペシアが日本で承認された2005年以降から、AGAクリニックの台頭が始まったと言われるほど有用なお薬です。

フィナステリドは脱毛から『守る』役割に最適な成分

AGAの主な原因は DHT(ジヒドロテストステロン)だとされています。DHTはテストステロンと呼ばれる物質が還元酵素によってが変換され生成されます。このDHTが毛乳頭細胞の男性ホルモン受容体と結合すると、本来は成長期にあるべき毛髪が退行期・休止期に移行してしまいます。

とても難しい言葉ばかり出てきて挫けそうになりますが、シンプルにまとめると

  1. 育つ
  2. 抜ける
  3. 育つ
  4. 抜ける …繰り返し

正常な環境であれば抜けた量と同等の髪の毛が再び生えてきます。ところがAGA患者の場合、

  1. 育つ(途中でDHTが阻害する)
  2. 抜ける
  3. 育つ(としてもDHTが阻害休止期間が長くなるor育たない)
  4. 抜ける …男性型脱毛症が進行

わかりやすさを重視して極端にまとめると上記のようなイタズラをするのがDHTと考えていいでしょう。つまり、DHTが男性ホルモン受容体と結合しないよう対処する事が根本的な解決になる訳です。フィナステリドは還元酵素を阻害することでDHTを生成させない働きをし、毛髪のサイクルを正常に戻すことでAGAを改善、または進行を止める「守りの要」として重宝されているのです。

プロペシアを3年使用した推移_前頭部

プロペシアを3年使用した推移_頭頂部

MSD製薬 プロペシア®錠 臨床成績<国内データ(3年>より引用

ミノキシジルは発毛を促す『攻める』役割に最適な成分

ミノキシジルにも脱毛を予防する効果があるとされていますが、それ以上に期待される効果は「発毛」にあります。ミノキシジルを使用している有名な治療薬に「リアップ」があり、リアップのOTCとして後発の「スカルプDメディカルミノキ」なども目にした事があるのではないでしょうか。

ミノキシジルは日本で唯一外用薬として発毛効果が認可された成分で、事実上これ以外の成分を使用した外用薬は効果が認可されてないという事と同じですので、実に強力で心強い薬用成分であると言えます。(他の成分は無効と断定するものではありません)

ではミノキシジルを使用するとどのように発毛効果があるのかというと…

  • 毛包に作用して細胞を増殖
  • タンパク質の合成を促進

…しているのではないか?という程度のメカニズムしか解明されていないようです(笑)

とはいえ、そもそもミノキシジルという成分は米国で降圧薬として開発・使用されていましたが、使用者に「体毛が生える」という副作用が発生したためAGA治療薬に改良されたという有名なエピソードがあります。その一点でもまず「毛が生える」という効果はがあり、日本皮膚科学会のガイドラインでも

男性型脱毛症に関しては,2%ミノキシジル液を 用いた 5 件のランダム化比較試験41)~45)を解析した,924 名の男性被験者を対象とした観察期間 24 週のシステ マティック・レビューにおいて55),2%ミノキシジル群 ではプラセボ群に比べ,脱毛部の総毛髪数がベースラ インより平均で 20.90 本(95%信頼区間 9.07~32.74)と 有意に増加した.

男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版より引用

このように有効性を認められ、推奨度がAと設定されています。ある意味では「理論は解明されていないが発毛する事実の一点で推奨度A」という事ですから、理屈より結果を求めるAGAに悩む方々には信頼度が増す成分ではないでしょうか。

また、注意すべき点として「ミノキシジルの外用」は推奨度Aだった事に対し、「ミノキシジルの内服」は推奨度Dである。という点です。ではミノキシジルの内服(錠剤を飲む行為)では発毛が認められない、意味がない行為という意味でしょうか?実はミノキシジルの内服は10年以上前から一部の方々が自己責任の範囲としてジェネリック医薬品の個人輸入などで実践し、当時からブログや掲示板等で効果を報告していました。その後、都内の有名AGAクリニックが「独自の処方薬」としてミノキシジル含有の内服薬を処方し始め、薄毛で有名だったタレントさん・芸人さんなどが驚くほど改善していった事は業界内で有名なエピソードになったそうです。

そんな実績のあるミノキシジルの内服がなぜ評価D(行うべきではない)を受けているのでしょう?その理由も同ガイドラインにしっかり掲載されていました。

ミノキシジル内服の有用性に関して臨床試験 は実施されていない. ミノキシジルは降圧剤として開発されたが本邦では 認可されていない.(中略) 多毛症以外のミノキシジル内服薬の副作用の報告は 少なく,内服用製剤の添付文書中の市販後調査欄に, 胸痛,心拍数増加,動悸,息切れ,呼吸困難,うっ血 性心不全,むくみや体重増加などの重大な心血管系障 害が生じるとの記載がある. 以上のように,ミノキシジルの内服療法は,利益と 危険性が十分に検証されていない

男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版より引用

要約すると「有用性の臨床試験」「副作用の検証」が十分ではないので、日本皮膚科学会は推奨しませんよ。という事のようです。今後ミノキシジルに関する臨床試験の結果が出れば評価も変わってくるのかもしれません。ですが一般的に臨床試験にはいくつものフェーズがあり、その結果を待った後に日本皮膚科学会が推奨するまで待つ…となると5年10年単位の話になってくる事が予想されます。そんな遠い未来の話ではなく、今日明日にでも薄毛というコンプレックスを何とかしたいという人々にとっては自己責任でジェネリック医薬品の個人輸入で内服用ミノキシジルを購入するという選択肢こそ価値があるのかもしれません。

新たに推奨度Aを取得したデュタステリドとは

実は今回ご紹介している日本皮膚科学会の男性型および女性型脱毛診療ガイドライン2017年版は最新版であり、ひとつ前の発表は男性型および女性型脱毛診療ガイドライン2010年でした。2010年版で推奨度Aとされた治療法は

  • フィナステリドの内服
  • ミノキシジルの外用

上記の2つだけでした。ところが2017年版では新たな推奨度Aに「デュタステリドの内服」という治療法が登場しています。これは従来のAGA治療で満足できなかった人々に大きな希望となったのではないでしょうか。

デュタステリド(ザガーロ)はフィナステリドより強力に5α還元酵素を阻害

デュタステリドはフィナステリドと同じく還元酵素を阻害することでDHTを生成させない働きをする成分です。ただし、まったく同じという訳ではありません。還元酵素にはⅠ型とⅡ型が存在し、従来のフィナステリドではⅡ型還元酵素だけしか阻害できませんでした。そう…デュタステリドはⅠ型還元酵素・Ⅱ型還元酵素の両方を阻害してくれる、よりパワフルなAGA治療薬として注目されています。

デュタステリドはフィナステリドの上位互換という事?

Ⅱ型だけでなくⅠ型の5α還元酵素も阻害する点からいえば「デュタステリドの方が強力なAGA治療薬」と言って過言ではないのではないかと思います。おそらく多くのAGAに悩む方々にどちらを選ぶかと聞けばデュタステリドと答えるでしょうし、AGAクリニックでもデュタステリドから先に勧めるというお話もよく聞きます。

ところが強い効き目の代償として副作用もデュタステリドの方が強いため、一概にどちらがより優れた治療薬であるかは個人の事情によってきます。具体的には

  • デュタステリドで副作用が認められた主な症例は勃起不全4.3%、精力減退3.9%、精液量減少1.3%
  • フィナステリドで副作用が認められた主な症例は勃起不全0.7%、精力減退1.1%

こうして比較してみると副作用が認められる確率が大幅に上がっていることがわかります。勃起不全のリスクより毛髪の悩みを優先したいという方であればデュタステリドを選択し副作用の有無を試してみる価値があるでしょう。

逆に勃起不全のリスクを取りたくない場合や、妊活中の男性には副作用の可能性が大きく下がるフィナステリドを選択する方が多い事でしょう。

どちらを使用すべきかについてはAGA治療への効果と副作用を正しく理解し選択すべきであり、どちらが優れていると判断するかは個々人の事情と価値観によって変わるものという事になるかと思います。

結論としてデュタステリド or フィナステリド服用 +ミノキシジル外用の併用が鉄板

日本皮膚科学会の診療ガイドラインで最も推奨される「攻め」と「守り」の相乗効果で毛周期(ヘアサイクル)を正常な状態に戻していく。現状ではこれが医学的に正解とされています。これからAGA治療を始めたいが何を選べば良いかわからないという場合にはこの組み合わせが最も手堅く推奨されているため安心して始められるでしょう。

ただし、まだガイドラインでは推奨されていないミノキシジルの服用や、この記事ではご紹介できなかった即効性と確実性の高い自毛植毛(推奨度B)などAGAと戦う方法はどんどん進化しています。

どの治療法を選ぶにせよ、まずはデュタステリド・フィナステリドの服用でAGAの進行を止めておく事が賢い選択かもしれません。

この記事を書いた人
Happy&Wellness編集長

医療コンサルタント歴8年
美容外科皮膚科クリニック(渋谷区)/AGA治療専門クリニック(新宿,銀座)/内科,泌尿器科クリニック(横浜市)/がん治療専門クリニック(横浜市) /むし歯治療,矯正クリニック(北区)etc.

美容健康業界コンサルタント歴8年
OTC医薬品/ジェネリック医薬品/ダイエットサプリ,EMS/口臭予防/寝具/基礎化粧品/トレーニングジム/禁煙グッズ etc.

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