2020年から飲食店の原則禁煙がはじまり、いよいよ喫煙者には厳しい時代になってきました。先進国を中心に煙草は忌避される趣向品という認識が浸透しています。煙草は身体への害が多く、健康を意識するなら真っ先に辞めるべき習慣の1つです。禁煙しようとチャレンジしても失敗する人が多く、ニコチン依存症は甘い病気ではありませんが、数ヶ月後・数年後のあなたに起こる変化を意識することが禁煙成功に役立つはずです。
実は禁煙の効果は最後の一服の20分後から始まっている
禁煙の効果は10年20年先…といった遠い未来のためにやるものと思われがちですが、実は即効性が高いんです。常に摂取し続けていた有害物質の供給を断ちきるわけですから効果はテキメン。科学的なデータで立証できる血圧や脈拍でも喫煙後20分後から変化がみられます。
厚生労働省 禁煙による健康改善 禁煙の効果より引用
上記は厚生労働省が発表している禁煙による健康への影響をまとめたイラストです。かなり簡略化されていますので、もう少し詳しく実感できた効果をご紹介していきたいと思います。
メリット. 味覚と嗅覚が改善する
味覚と嗅覚は自分では気がつかない程度のスピードでゆっくり鈍っているため、そもそも影響を受けていることに気が付いていない人の方が多いかもしれません。ところが味覚と嗅覚は禁煙初期からもの凄い速さで復活するので、かなり衝撃的な煙草の悪影響を実感することになると思います。
禁煙3日目の実体験→安物のクッキーがビックリするほど美味しく感じた
煙草を吸いたい気持ちを誤魔化すため、仕事中ずーっとガムを噛んだり水を飲んだり…椅子に体育座りしながらクルクル回ったりする私に、アルバイトの女の子がおやつのクッキーを1枚差し入れてくれました。善意としてありがたく受け取りつつも、お菓子好きな私はこのクッキーがあまり美味しくない…というより、甘みもバターの風味もないコンビニで一番安いクッキーだと気づいていました。正直なところ食べたくなかったのですが、礼儀として食べてみたところ…
- 痺れるほど強烈に美味しかった
- ブルブルと身震いした
- しばらく鳥肌が立った
大袈裟に聞こえるかもしれませんが、衝撃的に美味しかったです。
禁煙期間が長くなるにつれ色々な効果を実感しましたが、これが一番衝撃的で印象に残っている体験だったかもしれません。そしていかに自分が身体に悪影響な毒物を日常的に摂取していたのか…正常な状態とはこれほど違うのかと再認識するきっかけになったエピソードです。
禁煙5日目からの実体験→たばこの残り香は人を不快にさせる
世間的にはよく聞くエピソードですが、喫煙者は自分の匂いを客観的に知ることができないので「そんなに臭くないだろ」「個人の好き嫌いの範囲の話だろう」という認識だと思います。私もそうでした(笑)
ところがそうではありません。ただでさえ人間は匂いに早く慣れるようにできていますので自分の匂いに鈍感です。さらに煙草が嗅覚を鈍らせているため、非喫煙者がどれだけ臭いと感じているか気づかないのです。
禁煙開始から5日も経つと嗅覚も改善されはじめ、だんだんと他の喫煙者の匂いが気になり始めます。デスクの近くを歩かれるだけでイラっとする、近くに立ってるだけで苦痛、会議室などで一緒になりたくない…このレベルの方はかなり多いです。
ただここで重要なのは喫煙者の匂いに文句をつける事ではなく、自分自身も5日前までこの匂いを纏って他人に迷惑をかけていたという事実です。この事に気づけた時は心から禁煙してよかったと恥ずかしくなりました。
メリット.心臓や血管など循環機能が改善する
煙草といえば肺や喉などの呼吸器に悪影響を与えると思われがちですが、実は心臓などの臓器や血管全体にも害が及んでいます。
喫煙が原因と言い切れる循環器疾患については、前臨床段階(症状や発病する前の段階の病変がある段階)の動脈硬化・冠状動脈疾患・脳卒中・腹部大動脈瘤が挙げられています。喫煙によって血管の壁が損傷を受けて細胞の機能不全につながり、血液の成分も血栓形成に傾き、酸素運搬能が低下する(一酸化炭素が酸素と競合します)など複数の要素が循環器疾患との関連の背景に存在します。血管がぼろぼろになる・血液がどろどろになるという現象は、喫煙によっても大きく影響されます。
厚生労働省 喫煙とNCD(生活習慣病) 喫煙と循環器疾患より引用
このように命に関わる深刻な病気の原因にもなりますが、循環機能の改善による効果はもっと身近なところにも現れるのです。
禁煙20日目の実体験→顔色や肌のハリツヤがよくなり見た目年齢が若返る
この実感に関しては男性同士では気づきにくいかもしれませんが、女性はすぐ気づいて「お肌が変わった!」と言ってくれました。喫煙者と非喫煙者の一卵性双生児を比較すると顔の老け具合が全然違う!という写真を見たことがあるのではないでしょうか?流石にそこまでの差を埋めることは難しいと思いますが、顔色や肌のハリツヤは早い段階で変化がみられます。禁煙の効果はどんな高額な美容液より勝ると言われています。アンチエイジングに関心があり現状の対策で満足いく成果がでていない喫煙者の方にはぜひ禁煙を試してみていただきたいです。
メリット.肺や気管支の他、消化器官の不調が改善される
一般的には禁煙から1ヶ月〜9ヶ月ほど経過すると肺と気管支への効果がでてくると言われています。真っ先に効果が現れそうなものですが、やはり直接的なダメージを受けていた部分だけに細胞が入れ替わるまでゆっくり待つ必要があるのかもしれません。
消化器官の改善としては胃潰瘍・十二指腸潰瘍の罹患率が下がるだけでなく、再発率も3分の1にまで下がります。その他、大腸炎や過敏性腸症候群など、投薬では治療が難しいといわれている病気も禁煙が効果的とされています。
禁煙30日目からの実体験→息切れしにくくなり体力も戻ってきた
禁煙前や直後では5分も走れなかった私ですが、この頃になると30分走り続けることができるようになっていました。また、走ることで喉から胸にかけて痛みを感じていたり、どこかヒューヒューという音が聞こえていたのですが、そういった症状も改善されるようになっていました。
その他、通勤などで早歩きや小走りになるシーンがよくあると思いますが、そういった際にも息が上がりにくく明らかに「肺が元気になった!」「酸素ボンベを吸いながら走ってるくらい楽!」と感じる変化があったことを覚えています。
禁煙60日目からの実体験→慢性的な腹痛と下痢がなくなり快便になる
同じ悩みの方も多いのではないかと思いますが、私は基本的に1年中お腹の調子が悪い人間でした。病院で検査をしてもらった結果、過敏性腸症候群と診断され色々な薬を飲んでみましたが症状が改善されることはなく、お医者さんからも「ちょっと禁煙してみるのどう?絶対効果あると思うよ。」と打診されていました。
そんなお腹の弱い子だった私ですが、禁煙2ヶ月ごろから腹痛がなくなり、お腹を下すこともなくなりました!ニコチンには便を柔らかくする作用があるとはいえ、まさかこれ程の影響を受けているとは思いませんでした。
禁煙のデメリットとツライ離脱症状
健康面でメリットの多い禁煙ですが、私にとってデメリットだと感じることもゼロではありませんでした。もちろんメリットの方が多いので些細なことではあるのですが…慌てず対処できるよう事前に把握しておくといいでしょう。
デメリット.なんでも美味しくて食べ過ぎてしまう
味覚が正常にもどる事でご飯やお菓子が美味しく感じるようになります。それ自体は正常な変化なのですが、禁煙による口さみしさを誤魔化すために間食が増えて太ってしまう事には注意しましょう。
禁煙の実体験→3ヶ月で10キロも太ってしまった
先ほどの話はまさに私の実体験です(笑)
- 禁煙直後から食べるもの全てが美味しく感じてしまう
- たばこ吸いたい気持ちをおやつを食べて誤魔化す
この新習慣のせいで禁煙開始から3ヶ月で10キロ太ってしまい大変な思いでダイエットすることになりました。健康面で考えれば喫煙による害より10キロ分の肥満の方が遥かにマシらしいのですが、やはり容姿の面では大きなデメリットになってしまいます。
- 体重は後から落とすと割り切って禁煙正解を優先させる
- おやつは低カロリーなものを選ぶ
など、体重をコントロールする必要があることを覚えておくと良いかもしれません。
デメリット.堪え難いほど眠い。一日中ずっと眠気が襲ってくる。
禁煙の離脱症状として有名な「眠気」ですが、これは脳を覚醒させる働きをしていたニコチンの供給がストップした事が原因。非喫煙者であればアセチルコリンという成分が生成され脳を覚醒させているのですが、日常的にニコチンを摂取している喫煙者は身体がアセチルコリンの生成を止めてしまうため眠くなってしまうのです。ですが禁煙から2週間ほど経つと身体がアセチルコリンを生成し始めるため、この強烈な眠気に襲われるのは2〜4週間程度の我慢です。
また、離脱症状は薬で緩和するという方法も医師が推奨しています。車の運転や危険を伴う場所でお仕事をする場合には事前に禁煙補助薬の使用などを検討するといいでしょう。
ニコチンの置換療法(ニコチンパッチ)や経口禁煙補助薬バニクレイン(商品名チャンピックス)などの処方をうけることにより、ニコチンの離脱症状が和らげられ、禁煙が継続しやすくなり禁煙の成功率が高まります。
福井新聞 禁煙挑戦後に異常な眠気「離脱症状」投薬で緩和より引用
禁煙の実体験→仕事中や通勤中に居眠りしてしまった
少し眠い程度であれば我慢するのですが、2日徹夜した後にお腹いっぱいご飯食べた時のような…目を開けていられないほど強烈な眠気が襲ってきます。パソコン入力などの単純作業をしているといつの間にか居眠りしていたようで、Wardなどに意味不明な寝言を打ち込んでいたこともありました。
通勤などの電車移動でも突然深い眠りについてしまうようで、本来降りるべき駅を2〜3駅通り過ぎて慌てて引き返すような事がよくありました。
私は禁煙補助薬を使っていませんでしたが、仕事の効率や会社からの評価などを考慮するなら禁煙補助薬を使っておくべきだったと思います。
メリットの方が圧倒的に優勢。健康のためには早めに禁煙を。
公平な情報にするためデメリットと感じた体験もご紹介しましたが、それでも健康のことを考えたら禁煙以外の選択はありません。肺がんや喘息などが直感的に思い出されますが喫煙は様々な健康影響を及ぼします。
能動喫煙による健康影響のまとめ
因果関係を推定する証拠が十分(確実):レベル1
・がん:肺、口腔・咽頭、喉頭、鼻腔・副鼻腔、食道、胃、肝、膵、膀胱、子宮頸部
・肺がん患者の生命予後悪化、がん患者の二次がん罹患、かぎたばこによる発がん
・循環器の病気:虚血性心疾患、脳卒中、腹部大動脈瘤、末梢動脈硬化症
・呼吸器の病気:慢性閉塞性肺疾患(COPD)、呼吸機能低下、結核による死亡
・糖尿病:2型糖尿病の発症
・その他:歯周病、ニコチン依存症、妊婦の喫煙による乳幼児突然死症候群(SIDS)、早産、低出生体重・胎児発育遅延厚生労働省 禁煙による健康改善 喫煙者本人の健康影響より引用
これらのリスクは将来に及ぼす影響ですので私はまだ実感できていませんが、禁煙直後から様々な変化を実感できるという事はきっと自分自身では認識できていないだけで身体の各所にダメージを与えているのだと思います。
たばこは百害あって一利なし。医療機関や補助役などを上手に活用して、早めの禁煙にチャレンジしましょう!
参考文献
- 厚生労働省 喫煙と健康 喫煙の健康影響に関する検討会報告書
「喫煙と健康 喫煙の健康影響に関する検討会報告書」について - 米国公衆衛生総監報告書
http://www.cdc.gov/tobacco/data_statistics/sgr/2004/
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